あらすじ
著者は、ゴルフを始めてから健康になったことを報告しています。以前は体調が悪く、ちょっとした運動でも息切れや目まいがしていましたが、今では健康的な生活を送ることができているようです。そのおかげで、よく眠り、よく食べ、よく飲み、充実した日々を送っているとのこと。しかし、著者は健康を取り戻したことを喜びながらも、自分のことを「弟子」と呼ぶ、素行の良くない連中との関係に頭を悩ませています。彼らは、著者の弟子である綱男のために貯金を呼びかけており、著者はその気持ちに応えたい気持ちと、彼らの素行の悪さにためらう気持ちの間で揺れ動いています。
 去年ゴルフをはじめてから丈夫になった。洋服からの感じだといくらか痩せたかと思われるが、目方はむかしの十八貫から二十貫五百になった。十八貫のころゆっくり登っても息ぎれがして頂上へ登りつめると目まいがした山へウバ車を押して一息に登ることも犬と一しょに走って登ることも平気になった。だから、よく眠る。よく食う。よく飲んでせんだっても血を吐いたが、医者の命令の五分の一だけ守って、五分の一の日数で簡単に全治した。数年間の不健康をこの機会にとりかえすつもりで、なるべく最小限の仕事しかしない。しかし私の弟子を称する数名のあまり素行よからぬ連中が言い合せたように綱男クンのために貯金してあげて下さいと言い言いするので、私もなんとなくそんな気になりかけてきた。

底本:「坂口安吾全集 14」筑摩書房
   1999(平成11)年6月20日初版第1刷発行
底本の親本:「別冊小説新潮 第八巻第一〇号」
   1954(昭和29)年7月15日発行
初出:「別冊小説新潮 第八巻第一〇号」
   1954(昭和29)年7月15日発行
入力:tatsuki
校正:noriko saito
2009年3月26日作成
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